辻さんが無事に出産したという報を聞いて素直にめでたいと思った一方で、つい我が身の来し方をしみじみと振り返ってしまった今日この頃です。まだ未練がましく千秋楽の音源を聴いています。
自分の場合、ライブの楽しみのひとつにしているのがメンバー紹介とソロ回しなのですが、演奏者による手馴れた感のある観客の扇動と、律儀に手のひらで転がされて過分に応えてみせる観客のやり取りが笑えます。世が世なら特高警察にしょっぴかれそうな光景だったことでしょう。何にでも食いつく、何でも美味しくいただく、その貪欲さや節操のなさはハロプロを取り巻く者たちの特質でありましょう。それが美質かどうかは時によりけりですが、これだけ見栄も外聞も捨て去った善意の塊のごとき反応が返ってくることは普段あまりないと思いますので、演奏者にとっては辛抱たまらんのではないですかね。悪ノリは好きなので余計に後悔が募ります。ちなみに『Naked Songs』からの付き合いの福長雅夫さんは、松浦さんのディナーショーにも引き続き参加されるそうです。関係が継続されるのは素直にうれしい。


今ツアーで印象が変わった曲は『blue bird』、『HAPPY TO GO!』です。原曲が打ち込みですから印象は違って当たり前なのですが、バンド演奏の方が適度なラフさがあって自分好みです。中島美嘉が歌っても違和感がない美メロの、要は非つんくを象徴する曲でもありそうな『灯台』も生演奏で聴いてみたかったところです。ムーグだかフェンダーローズだかの音が印象的なカッチリした曲だと思います。ちなみに小林建樹のCD持ってます。
バンドの要諦は千ヶ崎学さんのベースが握っていたように思います。自分ですら知っていたのでおそらく有名な人でしょうし、実際ちょくちょく名前を見かけるのですが、自分にとって馴染みがあるのは青山陽一朝日美穂です。千ヶ崎さんは、朝日さんの最新作である『Classics』では全曲で演奏していますし、もりばやしみほ川本真琴と組んで、レトロで甘酸っぱい3分間ポップスを確信犯的に展開したミホミホマコトにも参加しています。レコードのを意識しているのか音質がアナログっぽい。朝日さんは風変わりな曲もメロウな曲も書きますし、歌詞も繊細で叙情的なものから言葉遊びのようなものまでお手の物です。それに、美勇伝と絡んだことがある鹿島達也も朝日さんに関わりがありますし、千ヶ崎さんにおいては松浦さんのツアーに帯同までしてもらっているのですから、例えるなら親戚の親戚の友人くらいの感覚ではありますまいか。要するに関係ないということか。でも、小林建樹が絡んだのが千ヶ崎さん繋がりであるのなら期待が持てるかもしれん。


ジム・オルークが大絶賛していた記憶がある、朝日さんの2ndアルバム『Thrill March』が前作から一転して内省的になったためか、揉めたかコケたかして所属事務所の契約を打ち切られたという話を耳にしたことがあります。もともと後追いなので真偽は知りません。ついでに言えば、ディアンジェロを彷彿させるハードボイルド路線が軌道に乗らなかったのか、林檎の兄貴である椎名純平も同様の憂き目にあったはずです。ライブを見物した際に、サザンが好きなんですと言って『栞のテーマ』を熱唱していたのは笑いましたが、その雰囲気から外見にそぐわずシャイで無類にいい人なのであろうと推察しました。往時のサポートメンバーが中島美嘉に移っているのを知ったときは妙に切なくなったものです。メジャーに属するどうかが当人にとって幸せかどうかは自分の知るところではありませんが、失ったものも少なくなかったのではないかと感じています。いわゆる「アーティスト」が自分たちの主義主張を貫徹しているという見方は皮相にすぎず、我々消費者の概ね保守的なワガママと上手く付きあっていかなければならないのは、程度の差こそあれ誰しも同じなのではないかと詮なきことを思ったものでした。


長くなるので朝日さんに話を戻します。メジャーを離れて以降のアルバムから少しずつ安普請になってきたこと、さらに穿って見れば彼女のライブの印象からも、資金面であまり恵まれていないのかなあと邪推したことがあります。安普請なのはハロプロも負けず劣らずで、まあこちらは事情が異なる気がしますが、ポップスの命は鮮度ですしハロプロこそ細部よりもアイディア勝負だよなあ、ということで千ヶ崎さん繋がりで朝日さんにお願いしましょう。現場にそんな権限があるかボケという正論は受け付けておりません。ドゥーワップから唐突にカントリーに変じて高速で走り去る珍曲『ぼくの爆弾』や、ジャンクでファニーな味わいのあるファンク『momotie』や『勉強』のような、ソロではあまり見かけなくなった初期の変幻自在でポップな作風を無責任に突っ込めば面白いことになりそうです。ハロプロは投げっ放しっぽいですし、資金面でも少し自由が利くのじゃないかなあと勝手に思ってます。朝日さんの線が細い歌声だからこそ映えるような気もしますが、レトロな音楽も好きであろうと推測していますので、甘ったるいのではなく甘酸っぱい方面でもうれしいです。ハロプロでレトロと言えば『シャイニング愛しき貴方』が浮かびます。中途半端ならいざ知らず突き抜ければ新鮮に思えるのだから不思議なものです。何とか千ヶ崎さんにも踏みとどまってもらって、誰か連れてきてくれないかなあ。それもこれも結局は松浦さん次第なのかなあ、ってな妄想をウダウダするのが好きです。他にすることはないのか。