DANCE HALL X@リキッドルームebisu

後先構わず全ての雑事を放り投げ、もう一度観に行こうではないかという友人との公約を果たすべく会場に赴きました。同友人との付き合いに限っては自分は極めて時間にルーズであり、30分遅刻は当たり前の南国気分なので到着したのは開演時刻を随分回った頃でしたが、自分以上に時間を守れぬ友人なのでその姿はいつもの如く見えず、ついでに演奏も始まっておらず。他人のことを言えた義理ではないが、どいつもルーズすぎる。それでも何とか落ち合うことができ、終演後は朝まで酒を飲むはめに。ムダに長いけれど感想を。


ロレッタセコハン (全く知らない)
サックス・ウッドベース・ドラムのトリオ編成。
「ロックなぞなぞ」とかいう投げっ放しジャーマンスタイルのMCを挿みつつ、オチが存在するのか否か判然とせず観客不在のまま進行していく様は、妙にシュールで笑えました。確信犯的にスカタンカタンした、そのくせ頻繁にシンコペーションしているっぽいドラムが印象に残ってます。また、ローランド・カークなのか単なるネタなのか不明ですが、時折アルトサックス2本を同時に吹くという荒業も披露。しかし、それすら誇るでもなく説明するでもなく、やはり何事もなかったかのように淡々と進行していくのでした。


赤犬 (知らぬでもなし)
演奏者多数。コスプレ満載、アホいっぱい。 
めくるめく下世話ワールド、所狭しと並ぶブリーフ姿の男達の惨劇、吐き気を催すチラリズムの応酬、嘘八百を並べ立てる身内トーク、阿鼻叫喚。ド歌謡曲からファンク、スカ、アイドル曲、ロック、スラッシュメタルなど、幅広いというか脈絡がないというか、アホというかバカというか。関西特有なのかどうかすら疑わしい噂に違わぬ乱痴気騒ぎ。おもろい。
興に乗ってきたところで、やにわに会場を練り歩きはじめるパンツ一丁の男達。近くに来てくれるなよとの祈りも空しく、半ケツのままで悠然と眼前を通り過ぎようとなさるので、やむをえずお触りを敢行しておきました。要消毒。また、『ヤングマン』の「Y・M・C・A」の如く、やれ「U・N・C・O」と振る舞え、やれコールせよと観客に強要するものだから、自分としたことがウッカリ嬉々として参加してしまいました。さすがに「うんこが好きだぜ!」と絶叫することは思い留まりましたが、いずれにせよ我が一生に消しがたい汚点が残る羽目とあいなりました。私的ハイライトは、誇らしげにスクール水着を着用したおっさんと、その周囲ででうごめく異形のヲタ芸集団による、もはや美醜を超越した目を背けたくなるアクト。PPPHを含め、所は違えど幾度も目にしてきた馴染み深い光景が眼前で繰り広げられたのですが、いかんせん賛美せねばならぬ対象はアイドルのアの字すらない野郎共ばかり。しかも、おぞましい、もとい哀愁漂う台詞つき。そしてTシャツに踊るは「りかっち」なる意味深の文字。そんな1曲限定の完全なるネタに奇妙な安らぎを覚えてしまった自分は世間に負けたのしょうか。終演後、うんざりするほどバカだったという意見で友人と一致。実は個人的に一番盛り上がったのですが、もう会うことはありますまい。


▽SAKE ROCK (全く知らない)
トロンボーンスキャット・ギター・ウッドベース・ドラム編成。
レゲエだかスカだか知りませんが、それっぽいリズムを随所に取り入れた巧みな演奏は個人的に好みです。単独では地味と思われるトロンボーンで緊張感ある空間を作り出し飽きさせることがないのは相当なものだと思いますがどうでしょうか。もちろん、硬質な響きのギターカッティングや輪郭のはっきりした重いベース、パワフルなドラムがあってのことであり、相当かっこいいと思いました。ぜひとも単独で観てみたいバンドです。その一方で、さっきまでかっこいいトロンボーンを吹いていた人物とは到底思えぬ、さかなクンを彷彿させる甲高い声で発する舌が絡まんばかりのスキャットに唖然。正体不明。そしてギャップあるその声のままで繰り出される長渕ネタに爆笑しました。もはや『金色のライオン』は嘲笑のタネでしかないのか。どうやら今宵は芸人達の祭典であったらしい。


大友良英&L?K?O&SKE (知らない)
ステージに向かって左端にあるDJブースにて演奏が始まった途端に会場の空気が一転。自分の立ち位置からは僅かしか見えませんでしたので編成は不明。
ノイズの美学ってやつですかね、ともかく自分にとっては聴き慣れないサウンド。不協和のまま絡み合うノイズ、会場を震わせる音圧、耳をつんざく金切音、断片的に鳴り響く調和なきリズム群・・・きっと凄いことをやっているのだろうなあと思いつつも、最後までよくわかりませんでした。大友氏自体は何度か見たことがあり、以前どさくさに紛れてサインまでくすねているのですが、その時のうつむき加減でギターをいじり倒している姿の印象しかなかったので、今さらながら新鮮な驚きを覚えました。少なくとも家で聴くことはなさそうな類いの音楽ですが。


Date Course Pentagon Royal Garden (知ってる。以降はDCPRGと表記)
メンバー多数。観客多し。酸欠。
今回で二度目のライブになります。前回から時間が経過しているため、以前と比較してどうだったのかは皆目わかりませんし、元々わかるものでもありませんが、CDよりもライブのほうが遥かに良いのは確かであります。一部でライブ用のアレンジが施されていたとはいえ、素人考えながらも再現は容易なことではないと推察されます。それを当たり前のようにやってのける実力、やはり役者が違う。
重層的なリズムが取り入れられているためか、よくカオティックとも表現される演奏ですが、その一方で、非常に丹精かつ繊細、理知的な印象も同時に受けました。様々な要素が違和なく渾然一体となっているためか制御不能にな状態には陥らず、結果として隅々まで統制され絶妙に抑制されているように思えたのです。目を閉じて聴き入ったとき、あちらこちらで音が鳴りながらもそれらが別個に感じられることはなく、全体として一個のバンドサウンドに集約されているようであり、その面では渋さ知らズとは似て非なるものだと感じました。全く別物ですから比較自体に全く意味はありませんが、そこが不破氏と菊地氏が志向するものの相違なのではないでしょうか。今さらですが、DCPRGに限ったことではなく菊地氏は、混沌を生み出し助長する存在というよりは、どちらかというと混沌の中に楔を打ち込み秩序付ける存在ではなかろうかと思った次第です。それがゆえに無二のファンク・ダンスミュージックとなりえるのでしょう。知らんけど。
前回も感じたことですが、ホーン隊の一糸乱れぬ見事なアンサンブルはもちろんのこと、全員が素晴らしい音色だと思いました。特に佐々木氏のトランペットソロは悶絶もの。そして、リズムの合間を縫うようにして展開される津上氏のソロもまた格別であり、個人的にはその時にもっともマイルスを感じます。あと、最近になってタブラの音を意識しはじめたからなのかもしれませんが、終始明瞭に聴こえていたような気がします。曲中において、リズム隊と菊地氏のみの演奏になったとき、そのかっこよさを再確認。また、DCPRGサウンドの要諦であるに違いない、バンドの中心にあってループし続ける野太いベース音に歓喜。このベースを聴いていれば、とりあえずは踊る際にリズムに喰いっぱぐれることはなさそうな気がするのですがどうでしょうか。
どちらかといえば自分は1stアルバムの方が好みなので、ベタと罵られようとも『Circle/Line』が聴きたかったのですが、贅沢を言えば罰が当たりそうです。ついでに言うと、最低限の制約しか施さない状態でのジャムセッションをいつの日か聴いてみたく思いました。そんなこんなで、どうも時間がおしていたらしく、否が応にも終焉を予感させる『Mirror Balls』を最後に割とあっさり幕を閉じたのでありました。短い演奏時間ながらも、濃厚で素晴らしいライブだったと思います。なお、赤犬のせいで時間が短くなってしまったと終演後に友人が憤慨していましたが、真偽の程は知りません。


なんだか知ったようなことを書いてしまって恥ずかしいのですが、まぁこれら全ては酒席において、あーでもないこーでもないとテキトーに付与した後付けでありまして、ライブ中は踊らにゃ損とばかりに踊り狂っていましたので、細かいことはあまり覚えていません。要は、屈指のライブバンドであるDCPRGのみならず、いろんなバンドを観ることができて楽しかったなぁということです。だれか最後まで読む人はいるのでしょうか?