10年間で得たものよりも、失ったものばかり気になって。
10年間かかってたどり着いた場所よりも、その先に行くことばかり考えて。

ベル・アンド・セバスチャンの新譜の帯に付されたキャッチコピーです。自分は上記の言葉を実感できるほどの年齢ではありませんし経験もないのですが、不思議と印象に残ります。いつか我がことのように捉えられる時がきてしまうのでしょうか、楽しみでもあり恐ろしくもあり。同時に、失笑してしまうほどに大仰な言葉を並べ立て、売り物としていかがなものかと疑問に感じるキャッチコピーも少なくない中で、やや斜に構えていながらどこか懐かしく感傷的である当バンドの佇まいを的確に表しており秀逸だとも思いました。彼らとは関係ないものの、以前「癒しを越えた癒しがある」という字句に呆れてCDの購入をやめてしまったことがあります。知らないCDを手に取った場合、帯を参考にすることもありますから決して侮れません。自分のような素人の雑文ではなく商品なのですから、的確でもないのに泣けるだの癒しだの安直な言い回しを目にすると興醒めしてしまいます。
胸を打つ言葉というのは人によって異なるでしょう。当然ながら画一的ではありますまい。しかしながら、それは存外に目新しい言葉ではなく、至極ありふれた一言であることが多いのかもしれません。もちろん紋切り型に陥る危険性を孕むけれど、必ずしも「奇異=良い」というわけではないでしょうから不可避だとも思います。言語感覚に優れている人というのは、こうした要素に正面から対峙でき、なおかつ丹念に磨き上げられる人のことを指すのかもしれません。残念ながら自分には全く縁がありませんが。
既出のことだとは思いますが、ベル・アンド・セバスチャンが好きな方なら日本のバンドである狐の会も気に入るかもしれません。いわゆるネオアコ。まだシングル3枚しか出ていないものの、アルバムがリリースされればそれなりに話題になりそうな気がします。青白い歌声が紡ぎ出す、郷愁だけに回収されない毒を孕んだ言葉に耳を傾けてみるのもまた一興でありましょう。なお、責任は持ちません。