『砂を噛むように・・・NAMIDA〜STUDIO LIVE〜』なるDVDとは何ぞや。
意地でも聴かせようという意図か、はたまた苦肉の策及び決算対策にすぎないのか。後者かな。楽曲のタイトルがツアー名にも関係していますし、生バンドで歌いたいと公の場で発言している松浦さんの意思を一部汲んだ代替措置ではなかろうか、と都合よく考えもしましたが、世の中それほど甘くはないか。楽曲に関してはそれなりに手間がかかっていそうな気がしますから何とか回収しようと目論んでいるのかしらん。商魂たくましい。これはファンクラブで販売すべきものでは?という気持ちがないわけではありません。しかし、それ以上に期待が膨らみますし、「STUDIO LIVE」と銘打たれているだけに、いかにド吝嗇な事務所とはいえども一応世間に流通させる以上さすがにオケの垂れ流しにはしないはず、たぶん、きっと。その一言に勝手に光明を見出し生バンドであることを前提として繰り言を続けます。


いかにもカップリング然とした小品である『ハピネス』。自然に流れるメロディ、端整なコーラスなどから、丁寧に作られていることが察せられます。特にクリーンなギターの音色が印象的で、これ以上足すことも引くことも要せず既に曲として完成しているように思えます。それゆえに小さくまとまってしまった感がなきにしもあらずですが、どちらかというと自分は当曲の方が好きです。声が割れている箇所を敢えて残しているのは、取り繕わずに接しようとした意思の現れなのかもしれません。知らんけど。方向の見直しも視野に入れた試行錯誤・産みの苦しみはまだ続くのでしょうし、相応の振り幅を設けていくことも必要だと思います。閉塞は避けたいところですから。それでもなお、ある種の原点回帰と捉えることも可能で、彼女にとって意義あることだったのではなかろうかという気が同時にしています。ちと大げさか。こちらも収録するのであれば、是非とも同一アレンジでお願いしたいところ。
一方で、『砂を噛むように・・・NAMIDA』に関しては、当初、もう一歩踏み込んでほしかったといった類いのことを述べました。目立ってなんぼの側面があるシングルのタイトル曲としては少しあざとさが足りない気がしていたのです。ここ2年くらいの松浦さんのシングルでは一番気に入っていますので満足なのですが、別アレンジでも聴いてみたいと贅沢なことを考えないでもありません。以前も書いたように例えば、現行のクラシカルなピアノの旋律をエレピなどでくだいてみたり、カッティングギターかオサレフレーズを重ねてみたりとか。あるいは、あと一枚ほど印象的なコーラスを足すとか、隠し味程度に管楽器を加えてみるとか。そうすると毒にも薬にもならないインチキAORになりそうだからやはりダメか。かといって、「歌笑」内で梨花ねえさんが歌っていたロッカバラード風のアレンジもパッとしなかったような気がします。芸人主体の歌笑バンドとやらの演奏の問題かもしれませんが。ともあれ、何かしら手を入れても面白そうなな気がするので、こちらはアレンジ変更に期待。万一、愛すべき「夢・音楽館」の感動の再現ともなれば、吐血しながら永遠なる忠誠を誓う所存です。ほらあれだ、村田陽一オーケストラの演奏も観に行ったしさ、だからさ、気を利かせて『オシャレ!』とか『YOKOHAMA SING A SONG』とかも演奏してくれたりすると嬉しいなあ、後者なんかは尺は短くともミュージカルのサントラでビッグバンドバージョンがあったしさ・・・はいはい図々しいですかそうですか。真摯に取り組んでいただけるのなら何でもいいです。


1890円という価格はいかがなものかと思うものの、ケチくさいことは言うまい、それがいい作品となるのであれば歓迎いたします。メイキング紛いが主となるようなことがあれば本末転倒も甚だしいので何らかの趣向は凝らしてくるはず、たぶん、きっと。もし採算ベースに乗ったならば次々と後に続いて常態化していく心積もりでしょうか。モーニング娘。がやれば、めちゃくちゃカッコよさそう。少しは期待してますぜ。