よくわからぬ雑誌に松浦亜弥のインタビュー記事。
受け答えが完璧すぎて揚げ足を取る気も起こりませぬ。自身の考えを言葉にすることは決して容易なことではないはずですし、それを他人に伝えるとなると尚のことでしょうに、いやはや驚きました。すげー。おこがましいことだとは承知しているのですが、かゆいところに手が届いたとでも申しましょうか、書きあぐねていたことを見事に代弁されたような気にすらなってしまいました。キモすぎる。
『砂を噛むように・・・NAMIDA』は、多数の候補曲の中から選ばれたと聞いていましたが、どうやら彼女もその選定に一枚噛んでいるようで、それをわかる言葉がありました。また、自身の言動に対する責任を自身で負わざるをえない立場になったことを意識してか、具体的ではないにせよ、現在に留まらず未来の展望をも語っています。「いろいろな事を知っていけば知っていくほど冒険ってできなくなるんだなっていうのは、デビューしてから感じたんですけど。でも、怖れず、いろいろなものにぶつかっていければなって思います」の下りなぞ19歳の言葉とは思えません。勉強になります! なお、同じ音でも地声とファルセットを使い分けているのではないか云々と知ったようなことを以前述べましたが、どうも語られそうになく完全に空振ったようなので、いつもの如くなかったことにします。


その『砂を噛むように・・・NAMIDA』。そろそろ聴きすぎて感覚が麻痺してきた気がしないでもないのですが、やはり自分はこの曲が(も)好きなようです。アレンジ変更後の方が断然いい。久々に耳障りな音ではなさそうで、ストリングスが主張しすぎるのではないかという被害妄想じみた懸念も、どうやら杞憂に終わりそう。主人公の歩幅に合わせるかのように傍らに寄り添うドラムや、そっと背中を押すかのような小粋なフィルなぞも自分好みです。ザ・バンドのリヴォン・ヘルムを彷彿させる・・・のか? 我ながら例えがおっさんすぎる。それはともかく、テンポの違いに拠らず、ガッチリ固めるよりも少しばかりの空間を残した方が彼女に合うのかもしれません。それゆえか、今回のけれんみのない彼女の歌唱がより引き立つと同時に違和なく溶け込んでいるように思えます。ときおり見受けられた、オケに歌声が乗っかってるだけといった印象は今のところありません。こう言うと語弊があるのかもしれませんが、全体が女性的な柔らかさに包まれているような気がします。
そして何よりも松浦さんの歌声が素晴らしい。年齢を重ねたことで生じる自然な落ち着きと柔らかさが滲み出ていているように思えます。この手の曲調は『渡良瀬橋』以来となり、そこはかとなく女性の強さを感じさせるという意味では地続きだと言えそうです。いえ、『渡良瀬橋』よりも自身にグッと引き寄せた、とてもパーソナルな曲なのかもしれません。初聴の段階では地味に思えたものですが、確かな成長を覗わせるニュアンスに富んだ彼女の歌声と、相互に引き立てあう清廉としたメロディに心を奪われました。新たな一歩を踏み出した松浦亜弥の姿がここにあります。