ハロ☆プロパーティーNEOの千秋楽に行ってまいりました。


NEOの初日において負の象徴と化したオープニングの『威風堂々』がこそばゆく感じられたのは、千秋楽の高揚感からだけではなく、一抹の後ろめたさがあったからでしょうか。幕が上がると同時に内壁の側面に「FINAL」と「HPP! ハロプロパーティー!2005」という文字が映し出されるという些細ながらも気の利いた演出がなされ、奇妙な連帯感を伴いながら会場のボルテージがにわかに上昇します。各メンバーの入場時にアナウンスされる松浦さんの紹介が「ハリウッドセニョリータ」から「究極のオヤジ殺し」に変更されていました。なんだそれ。オールナイトニッポンでも用いなくなって久しい呼称は、例によって早々と飽いてしまったのでしょうか。ということは、今回の「究極のオヤジ殺し」は、われ京本正樹の篭絡成功せりと高々と宣言したと解釈してもよろしいのでしょうか。謹んでお悔やみ申し上げます。恐ろしい女だ。「101回目のKISS」ツアーに幾度も足を運び、それ相応に思い入れのある自分にとって見慣れたにもほどがある使い回しのステージセットは当然ながら健在。どこに向けられているのか皆目わからない迷走の限りを尽くしたセットリストの中で最大の救いであり幸運だったのは、曲者のメンバーが集結していたことであったと強く思った次第です。


以前も述べましたが、演者に対する不満は何ひとつありません。中でもダブルユーは、今秋自分が観たハロプロのライブにおいて最も安定していたように思います。また、加護さんが歌う『ブギートレイン03』がめっぽう良くなっていて驚きました。どういうわけか、つんのめるように歌う人が多いハロプロにあって、跳ねた心地よい感触を出せる人は希少でしょう。リズム感がいいとは、本当はこういうことを指すのではないでしょうか。当初は付け焼刃としか思えなかったものですが、音程もバッチリでしたし、藤本さんとの比較云々ではなく加護さんの世界として十分に成立していたように思います。さぞ多くの修羅場をくぐってきたのでしょう。惚れたぜ。
そして松浦さん。腰にサポーターを巻いていたこともあって、やはり体調が芳しくないのかと心配になりました。実際、歌・ダンス共に万全とは言いがたいものがあり、不調のときに聴かれる、ごまかし巻き舌歌唱が頻繁に登場していました。そうした中にあっても『気がつけば あなた』は抜群だったように思います。譜割りやメロディーが単純な曲ということも影響しているに違いないけれど、彼女にとって大切な曲となりえているのでしょう。『101回目のKISS』ツアーでは、語尾を後ろに引っ張ったり逆に短くしたりと、試行錯誤の痕跡を伺わせたものですが、今は総体として元に戻そうとする意図が感じられます。松浦さんのヤクザな観客煽りも久しぶりに拝見しました。声援が小さいときに「コラー! みんなもっと声出せるはずでしょ」とハッパをかけ、それにやけくそ気味に応える観客(自分含む)とのやり取りが笑えます。それでこそ松浦亜弥。おかげさまで最近は、テレビ出演などでしおらしくネコをかぶっている姿に違和感を覚えるようになってしまいました。ありがたやありがたや。


最後に各メンバーのロングMCが行われます。目元を潤ませながら聴いていた松浦さん、一人ひとりと視線を合わせながら、自分にとってメンバーがいかなる存在であったかを述べはじめます。斉藤さんはお姉さんのような存在でいつも体調を気遣ってくれたと。「101回目のKISS」のときから薄々感づいてはいましたが、甘え下手であろう松浦さんが公の場において臆面もなく親しみの情を表すのは珍しいことです。辻さんはいつも「フォーフォー」言っていたと。それはオチなのか。大谷さんとはハロ☆プロパーティーの在り方について何度も相談したと。さぞ噛みあわなかったことでしょう。村田さんは変わった人なので見ているだけで元気になれると。何となくわかる気がします。加護さんは互いに何度も相談事をしたと。関西出身ということもさることながら、この二人は似通った点があるような気がしてなりません。柴田さんは自分では気づけなかった点を指摘してくれたと。お姉さん気質なのかしらん。
このように名残を惜しむかのように、ギュッと凝縮された言葉が紡がれます。そして、この上なく恥ずかしそうな表情を浮かべながら告白します。「今までハローの中で仲がいい人ってミキティしか言ったことがなかったんですけど、これからはこの7人もそう言おと思います」。記憶が曖昧なので多少食い違いはあるものの、大意においてこのような発言でした。拍手喝采であったことは言うまでもなし。自分にそれぞれの心情を推し量る術はありませんから安直な感動で押し流してはなるまいと決めていたのですが、その言葉を聴いたときにはつい目頭が熱くなってしまいました。キモい、キモすぎる。キャプテン・松浦亜弥としての総決算、彼女にとってのツアー観、31会場61公演!と半年に渡って苦楽を共にしたメンバーそれぞれの思いが、いみじくも滲み出ていたような気がします。
そういえば、いつぞやのポップジャムで「自分で成長したと思う部分は?」という質問がなされたときに、松浦さんが「周囲を見れるようになった」という類いの答えを返し、年齢不相応だと逆に揶揄されていました。多くの想いがこの一言に込められていたのだろう、と今ならば思います。ご存知のように彼女は唯我独尊の人であり、それは時に傲慢と映ることもあります。その彼女が進行役に徹し、メンバーを輝かせることに心を砕いていたのがハロ☆プロパーティーです。お互いに得たものがたくさんあったのでしょう、己を輝かせることで精一杯だったはずの少女が、いつの間にか一回り大きくなっていました。ついでにエロねーちゃんにもなりました。取り巻く環境や立場上、今後こうした場面が増えてくるでしょうし、自分としてはあまり歓迎したくない思いがあるのも確かなのですが、彼女ならば問題なさそうな気がします。


三本締めの合図が空気を直接に振動させて響き渡ります。マイクを通さない小さいけれど大きな力強い声。大団円を迎えます。内容が素晴らしかったとは言いません。『笑顔に涙』や『可能性の道』が軽んじられたように思えて憤慨したこともありました。最後までグダグダでした。それでも長期に渡ったツアーを締めくくるに素晴らしいライブでした。自分が言うのも筋違いなんだけどさ。皆さんお疲れさまでした。そして、ありがとうございました。