calm presents K.Fのフルバンドは9人編成。ギター&シーケンサー、キーボード、ベース、ドラム、コーラス&パーカッション×2、コーラス&キーボード、ソプラノサックス、トランペット。


もともと幾つかのプロジェクト名義をコンセプトに応じて使い分けているようで、自分が所有しているDVDでは変則的なビッグバンドの21人編成となっており、そこでのK.Fはコンダクターとしてシーケンサーを操作するのみでした。ところが今回は自らもギターを弾き、主にコードカッティングを担当。プログラミングされたキックの4つ打ちに生ドラムを絡めたリズムとメロウなベースの上に、肝であるパーカッションが織り成すオーガニックな響きと、広がりのあるメロディーが加えられていきます。その4つ打ちと生ドラムを併用する手法自体は、ジャンルは違えどブンブンサテライツのライブでもお目にかかっています。両者ともダンスとしての機能に特化するのであれば生ドラムがなくとも十分に成立するはずだと初めは不思議に思ったものです。しかし実際に演奏を聴くと、人が介在することで必然的に生じる有機的なずれや揺らぎが、重要な要素となっていることに気づかされます。どう感じるかは理屈じゃなく感性であり(語れるほど知らないだけ)、また個人の嗜好によるとは思うのですが、それまで4時間に渡ってBPM不変のストイックな4つ打ちを浴びるように聴いて少しウンザリしていただけに、尚更そのアナログさが胸に沁みました。


どうもcalmなるプロジェクトではCDとライブを別物と捉えている節がありそうで、そのためかアンビエントで静謐な趣のあるカッチリとしたCD音源とは随分と印象が違って、演奏者の息吹きが直接的に伝わってくるような熱気のある生々しい演奏でした。矛盾するようですが、それでいて、そこはかとなく哀愁が漂っているのが特徴でしょうか。3人で構成されているとは思えぬ分厚いゴスペルコーラスでしきりに観客を煽るも、calm目当てな人ほど聴きに徹する者が多かったとみえ、やや不発に終わっていたのはご愛嬌か。それでも、誰よりも楽しそうに演奏していた凄腕キーボード奏者の熱演を経て会場が温まりはじめ、すぐに歓声が飛び交うようになります。つくづく『Shining of Life』は名曲。また、ホーン隊によるファンキーなリフとメロディーが印象に残る『Simple Chords Again』も素晴らしい。この曲の中頃に挿入される『My Favoirte Thing』のソプラノサックスのソロは白眉。コルトレーンの名演としても知られるこの曲、数分に渡って丁寧かつ叙情的に綴られる物語に観客席から惜しみない拍手が送られます。こちらも名演でしょう。そして、ドラムソロとギターの掛け合いで終了。
正味40分ほどしかなく、まさかこれで終わるまい、なんだギャグかと笑っていたら、本当に終了。知らなかった自分が愚かだったとはいえ短すぎるぜ。泣ける。もう少しハウスというかテクノを勉強しておきますから、是非ともワンマンライブを。広大すぎて何から聴けばいいのかわからないけれど。ともかくステキなライブでした。感謝。