藤井郷子カルテット@新宿ピットイン

藤井郷子(p)・田村夏樹(tp)・早川岳晴(b)・吉田達也(ds)


先日、別カルテットにて藤井さんと田村さんにはお目にかかったのですが、本日体験したのは全くの別物。前回が柔であるならば今回は剛。聞きしにまさる豪腕カルテットでした。強引にカテゴライズすれば、おそらくはフリージャズとなるのでしょう。ただし、メロディもへったくれもないデロデロのそれとは異なり、各楽曲に緻密なアレンジが施されているのが最大の特徴でしょうか。また、このジャンルにしては各曲が比較的コンパクトにまとめられていますので、初耳であっても十分に曲として認識できますし、何よりも聴き易い。が、曲中でテンポが変わるのは当たり前、頻繁にブレイクを挿入しながら複雑に展開していくので決して単調なわけではありません。予習を放擲して恥じぬ自分にはアドリブとの境目が今ひとつ判然としませんでしたが、もはや毎度のことですので深く考えないことにします。
それはともかく、思わず苦笑いを浮かべてしまうほど全員バカテク。この人たち上手すぎる。前回、朴訥な音を奏でていた藤井・田村両名の豹変ぶりが面白く、どちらも弾き倒し吹き倒しの怒涛の展開。また、吉田達也のめっぽう鋭いドラミングもさることながら、早川岳晴のベースが圧巻。小刻みにスラップ奏法風の音を交えつつ、上へ下へと縦横無尽。彼の贅を凝らしたソロ演奏はベースの枠組みを軽く逸脱していたのではなかろうか。頭おかしい。ただ、どれだけ各々の演奏が上手かろうとも、そこに一定の統一性がなければ聴き手としては辛いものがあるのですが、先に述べた緻密なアレンジの存在ゆえに何の問題もなく、この手のライブでは途中でダレてしまうことが多い自分であっても最後まで飽くことがありませんでした。重厚なのに何故か風通しのいい楽曲と達者な演奏が合致した素晴らしいライブであったように思います。いいもん見させていただきました。感謝。