BEASTIE BOYS@日本武道館

友人Hに誘われるがままビースティー・ボーイズのライブに行ってきました。
が、日頃の感謝と怨念を込めて快諾してみたはいいけれど、さほど関心がないゆえに全くと言っていいほど彼らのことを知らず、アルバムを聴いたこともなければ曲も知らないという悲惨な状況であり、さらにはメンバーの名前すら下調べするのを忘れる始末。意味ありげに誘ったくせにその友人Hも自分と似たり寄ったりで、ビースティーのメンバーって何人いるの?と真顔で尋ねてくるやる気のなさ。それに答えられない自分。ファンにボコられそうです。かようにテンションは地を這う有様だったのですが・・・げげっ、すげえライブですやん。


前座のぬるい演奏が終わった後に、DJが皿洗いをしているコミカルな姿がスクリーンに映し出されます。そこで皿の代わりにレコードが手渡され、そのままトコトコと歩いてDJがステージ上に姿を現すのですが、その映像が途中で生中継だと判明する仕組みになっていたものですから、会場のあちこちから歓声が沸き起こります。つかみは上々。続いて黄色いジャージ姿で統一したライミング(?)担当の3人が登場します。アリーナのブロック内後方で心安らかに見物する算段だったはずなのに、いてもたってもいられず、というか背後からの圧力に屈して気づけば観客の中へ分け入って押し合いへし合い。圧巻は、数分間に渡る超絶(たぶん)DJプレイソロ。その所作の一部始終がスクリーンにアップで映し出され、またも観客は大盛り上がり。
その後、一旦メンバーが袖に掃けて会場が暗転。しばらくすると、お祭りの巨大な屋台を彷彿させる、提灯らしき照明が無造作に取り付けられたアホくさいセットがステージに現れ、そこで先ほどのDJセットとは打って変わってバンド演奏がはじまります。ドラム・パーカッション・ベース・ギター・キーボード編成。知らぬ間にメンバーが増えており、しかも全員がタキシード姿。ははぁ、さてはシャレだなと思ってその瞬間は笑ったものの、予期に反してやたらかっこいい演奏でしたのですぐに釘付けとなりました。なぜソウル風味だったのかはわかりませんが。


そして、数曲演奏したのち何事もなかったかのように再び元のDJセットに戻ります。前半戦を上回る周囲の盛り上がりようから、ここにきて彼らの代表曲が集中投下されたと察したのですが、それに加えてメンバーのひとりがアリーナに降りて観客を煽るなど、これでもかと言わんばかりのアゲアゲ一直線のパフォーマンスを展開していたので、一切の楽曲を知らない自分のような一見さんでも全く問題はありませんでした。さらに、スクリーンに次々と映し出される映像もやたらに凝っており、しょーもなくも面白い小ネタ映像を軽妙なタイミングで挿入するのはまだ序の口。リアルタイムでライブ映像の編集を行いつつ、リズミカルな展開で会場を盛り上げていくVJの演出は圧巻の一言。人ごみに紛れながらアリーナで観ていた影響も多分にあるとは思いますが、途中でダレることは全くありませんでした。
熱気冷めやらぬまま矢継ぎ早に行われたアンコールで、またまた彼らはバンドスタイルに変化します。ブリブリのベースに、攻撃的なギターを絡めたラウドなロック、なぜかツインドラム。さきほどのソウル風味の演奏は何だったのかと呆けつつも、こちらもめっぽうかっこいい。実に芸達者です。あと、ブッシュがどうのこうのといったMCがあった時に、英語を解する観客達がいっせいに上空に中指を突き立てる場面がありました。ヒップホップに限らずアメリカの一部で反ブッシュの動きが根強くあるとは聞き及んでいたので、まぁそういう内容だったのでしょう。そこで生じた雰囲気そのままにヘビーな曲へとなだれ込み、大盛況のまま終了とあいなりました。


DJスタイルとバンドスタイルを交互に配した演出は勿論のこと、おそらくは映像・照明などの全てが高水準であり、尚且つサービス精神が枝葉末節にまで行き届いたメジャー感溢れるライブ構成に、これぞエンターテイメントとひざを打ちたくなりました。ステージ上には姿を現すことのないスタッフを含め、全員が相当に頭のいい、けれど相当のバカに違いありません。愛すべきバカはかっこいい。そうした演出もさることながら、何がなにやら皆目わからないにも関わらず十分に楽しめたのは、問答無用にキャッチ−なサウンドと、はっちゃけたパフォーマンスがあったからでしょう。もちろん楽曲や歴史を熟知しているにこしたことはありませんし、ライブを十二分に楽しむ上ではそうあるべきだと思うのですが、それを知ろうが知るまいが、いいものはいい、どうあっても好きなものは好きなのです。そんな当然といえば当然のことを改めて確認した次第です。何だかんだ言っても楽しいということが自分にとっては一番ですので、早くも今年のベストライブ5の有力候補になりそうです。また機会があれば、そのときはしっかりと予習をした上で臨もうと思います。いいライブでした。感謝。