『Heaven's hell』 Cocco


ただ伝えたいことがある。
ただ届けたいことがある。


自らの歌を「痛み・排泄」と表して止まなかった彼女はここにいない。抑圧と解放の狭間にのたうつ感情を吐露することで実存を問い続けた姿は過去となった。けれども達観するに至ったわけではなく、その想いは今もなお絶えることなく溢れ出す。
吹き荒れる風に水面が波打つ光景を甘美な思い出として振り返ることなく、されど打ち捨てることもなく心の奥底で内在化する過程。そこで彼女が手にしたものは一体何だったろうか。


ひとりの歌い手が歌を紡ぐ。
紡がれる詩の世界を超えて澄みきった空に響き渡る。
今という座標軸にとどまらず遥か未来へと伸びゆく開放の歌。