夢・音楽館

長い時をかけて育まれた情熱という名のつぼみが、今まさに華開かんとしている。
無垢と成熟の狭間に匂い立つ色香。「才能」という安易な言葉で評されることを拒む、強靭であると同時にしなやかで生々しい輝き。
そこに存在したのは、現在をあるがままに生きる松浦亜弥の姿だった。


村田陽一(tb)、佐野康夫(ds)、エリック宮城(tp)、小池修(sax)、山本拓夫(sax・bcl)、高水健司(b)をはじめとする、日本を代表するスタジオミュージシャンで編成されたビッグバンドとの共演。
とりわけ強く印象に残ったのは、ウッドベーストロンボーンバスクラリネット、チューバの一風変わった編成をバックに従え、軽快なウォーキングベースの独奏からはじまる『ドッキドキ!Loveメール』。
バスクラトロンボーンが複雑に織り重なっても動じることがなく、基底に流れる4ビートのシンプルさゆえに却って彼女のリズム感の良さが際立つ。また、コード感が明瞭でないにも関わらず揺らぐことのないメロディーや、裏のビートまでもしっかりと感じさせる巧みな歌唱に感動する。今ツアーから顕著になりはじめた歌唱の変化は、ベースの捉え方の変化によるものではないかと想像していたが、それもあながち間違いではない気がしてきた。


僕らの音楽」で垣間見えた不安定さは、もはや微塵もない。のど先でこねる歌い方はほぼ消え失せ、歌声が真っ直ぐに伸びるようになった気がする。その代わり、かつての儚さは失ったのかもしれない。されど、嘆き悲しむには及ばない。より磨きを増した表現力と、取り繕っただけでは生まれ得ない逞しさを彼女は身に付けたのだから。『The Last Night』より始動した第二章(と勝手に思っている)。ついに彼女はそのスタート地点に降り立った。


・・・なんだか上手く書けないけれど、とにかく感激した。全てが僕好み。
もしかすると、とんでもない人と同時代を生きているのではないだろうか。リアルタイムで彼女の成長の過程を見ることのできる幸福を僕はいま噛み締めている。
松浦亜弥さんに乾杯!続きは明日。