ROVOが主催するイベント、Man Drive Tranceに行ってきました。


Dachambo
まずは訂正。トリプルドラムではありませんでした。CDのクレジットではツインドラムになっていましたので、おかしいなあとは思っていたのですが、自分は一体どこで勘違いしたのでしょうか。まぁどっちでもいいですけど。
想像していたよりも随分と黒い演奏でした。不必要に整理することなく勢い任せに突き進む様が痛快です。最近のズボンズもこんな感じでしょうか。ツインドラムや太いベース音もさることながら、ギターのカッティングのタイム感が自分には心地よく感じられ、曲を知ろうが知るまいがおかまいなしに、自然に体が動いてしまいます。終盤、サンプラー4つ打ちを織り交ぜる場面があり、余計なのではなかろうか、とその瞬間は思ったものですが、全く問題ありませんでした。カッコいい。ただ、全体的に音圧が高すぎるのか、はたまた音響のせいなのか、あるいは意図したところなのか、ディジュリドゥがさほど目立っていなかったような気がしました。あまりお目にかからない楽器なのですから、非バンドのGOMAのようにとはいかぬまでも、ライブでは曲中でフューチャーする機会を設けてもいいのではないかと。あと、個人的にヴォーカルは不要だと思うのですが、いかがなもんでしょう。


Sitaar Tah!
会場の一段高い場所に設置されているDJブースの狭いスペースに、12人のシタール奏者が所狭しと並びます。たいそう奇妙な画ヅラでした。演奏は1曲のみで30〜40分程度だったでしょうか。それとなく少しずつ色彩を変えていたとはいえ、これといった展開はほとんどなく、はたしてそれが曲であったのかどうかも定かではありません。というよりは、自分の狭い価値観に収めようとすること自体が浅はかなのかもしれません。ソロを取る人を除いては、みな神妙な顔でバックに努め、感情をさしはさむ余地がないかのように、同じフレーズを切れ間なく淡々と紡ぎます(もちろんパート割はあるでしょうけど)。絶え間なく放流するその怪しく幽玄な音に酩酊したのか、近くに位置していた観客達が次々とその場に座り込み、うっとりとした表情で演奏者達を見上げはじめます。ダンスフロアに似つかわしくない不気味な光景が一部に現出し、正座をして聴き入る者すら現れる始末。それもそのはず、ふいに立ちくらみがするような、言葉では表しがたい摩訶不思議な感覚が全身をぼんやりと覆うのです。ただし、自分は酒の力も借りていましたが。シタール北インドで生まれた楽器だそうで、その音楽はいわゆる宗教のそれではないとのことですが、それにしても、この感覚はなんなのでしょうか。世界は広い。


ROVO
間違いなく最高峰のライブバンドでしょう。観客の盛り上がり云々を差し引いたとしても、音が鳴らされた瞬間に空気が一変するのが、自分のような鈍感な者にも即座に伝わってきます。
タイプが異なるのでDachamboと比較するのもアレなのですが、同じツインドラムでも、こちらは明らかに別格でありましょう。また、キーボード奏者が脱退して以降、それまで控えめだった山本精一のギターが前面に出るようになっており、それゆえに、焦燥にも似た荒々しさ加わったような気がします。それは、ギターとバイオリンが手探りで交歓するかのような新曲に顕著で、勝井祐二のバイオリンもいつになく熱気を帯びていたように思います。少しずつとはいえ、バンドの音は変わってきているようです。一方でそれとは矛盾するようですが、相変わらず洗練の度合いが只事ではなく、もはや恐れ入るばかりです。ドラマーの芳垣安洋の趣味が反映されているのか、それともSitaar Tah!の演奏を受けてのことなのか、民族音楽的な色彩がやや濃くなっているように感じられ、これは賛否両論あるかもな、と初めは思っていたものの、そこはさすがと言うべきでしょうか、毎度のことながら中盤から後半にかけての構築は圧巻の一言。ROVOといえば、静から動へと移ろうときに解き放つ強烈な高揚感が代名詞であるけれど、それも、このひりつくような緊張感を湛えたままに深々と沈潜する静の時があってこそでしょう。この圧倒的な高揚感はライブでなければ味わえません。ベタは承知で申し上げます。やはりROVOは宇宙!最高!