DCPRG@リキッドルームebisu

DCPRGを観てまいりました。菊地成孔を生で拝むのはこれで4度目になりますが、今回を除いては全てゲスト出演でしたので妙に感慨深いものがありました。
念のため感想めいたことを書いておきます。ムダに長いだけですが。



安田大サーカスのコントで幕を上げます(なぜ?)。しきりに松浦亜弥ネタを取り上げていたのが印象に残ります。一般的に想起される彼女の姿は『Year!めっちゃホリディー』で完全に停止しており、あとの大部分はCMなのだなぁと嬉しくもあり複雑でもあり。


コント終了後、セッティングに時間を要したため、結果として間延びした感がなきにしもあらずでしたが、最初に演奏された『Catch 22』で、幾度となくブレイクを繰り返して観客を煽り、すぐさま会場を沸かせます。そして、『Circle/Line』→『構造Ⅰ』→『Hey Joe』の流れで頂点に達します。特に『Circle/Line』は、菊地雅章氏の演奏を含めて自分の大好物でありまして、反復される不穏なベースラインから一挙に解放され炸裂する瞬間は、何度聴いてもいいものです。
複数の変拍子が錯綜するため、観客のリズムの捉え方はおのずと各自で異なってきます。予期していたこととはいえ自他共に認めるリズム音痴の自分は面食らうばかり。『構造Ⅰ』における、ホーン陣のアンサンブルが一体どのリズムに合わせているのかいまだにわからないのですから、あとは推して知るべし。
4つ打ちらしきものと、6拍子がどこかしらで混在していたように思いますが、それも同時に鳴らされるリズムの内のひとつに過ぎないものでしょうから、初めこそ隣の観客と自分とでリズムの感じ方が異なることに違和感を覚えてしまった自分も、それ以降は一切気にならなくなりました。複数が混在しているのだから当然といえば当然ですし、どうせ気にしたところでわかるはずもなし。これこそが醍醐味であり、全ては詮なきことであります。それにしても、これで踊り狂える人たちはすごい。演奏者は云わずもがな。リズム音痴の自分は、ただ呆けるばかりでした。


観客に背を向けたままステージ中央に位置する菊地氏。彼を取り巻くようにして演奏者陣が周囲に並びます。身振り手振りで次々と演奏者に指示を送りながら彼が演奏をコントロールしていくわけですが、意図が上手く伝わらないこともあったのでしょうか、「次のソロはあんただよ、あんた」と言わんばかりに執拗に演奏者を指差す場面が何度か見受けられました。パフォーマンスなのかもしれません。いずれにしても、CD音源と異なる部分が多々あったことから、即興の要素を十分に残しているのであろうと推察。面白い。詳しくは知らないけれども、ジョン・ゾーンが率いたコブラも似たような感じだったのかな、と関係のないことを思いながら興味深く観ていました。


青木タイセイ佐々木史郎津上研太、ゴセッキーなど、兼ねてより名前だけは聞き及んでいたけれど、実際には観たことのなかった演奏者多数。どのメンバーも楽器を鳴らしきっているのでしょうか、とにかくどの音もよく通ります。特に佐々木氏のトランペットの音色と、音の洪水の中にあって埋もれることなく最後まで存在感を主張しうるチューバの音色の強さが印象に残っています。津上氏の余裕ある演奏もさすが。あと、何がどうと説明できるわけではありませんが、ゴセッキー氏のソロが少し異質だったような気がします。おそらく気のせいです。また、背景にある様々な要素を彷彿させるギターソロ、いつもの如く冴え渡る芳垣氏ドラミング、ひっきりなしにキーボードを引き倒す坪口氏などなど・・・あんたらすげぇよ。
どうやらフルメンバーではなかったようですが、全員が揃った暁には一体どうなってしまうのでしょうか。


約2時間ぶっ通しで演奏を続けた後に、初めて菊池のMCが挿まれます。戯れなのか、はたまた本気で言っているのかどうかは不明でありますが、幾度となくひとりで吹き出すなど終始ご機嫌の様子でした。これが噂に聞く躁に似た状態かと合点。新作CDに関する裏話めいたものや、仕事でブエノスアイレスに赴くことになったが警護なしで行くため危険であること、また歌舞伎町にまつわる話などをひとしきり語った後、『構造Ⅴ』が最後の曲であると説明。その説明が終わるや否や発せられるは、お決まりの「えー!」という観客の声。それに対して、笑っていいともを引き合いに出しながら「ねだれば何でも叶うものじゃない」との趣旨の発言をしたので、自分はがっかりしてしまったのですが、なんのことはない、しっかりとアンコールはありました。そして『Mirror Balls』でめでたく幕を閉じたのでありました。いやはや、それにしても『構造Ⅴ』はかっこいい。そのかっこよさを説明せよと言われても自分にはわかりません。なので、もはやそうとしか言いようがありませぬ。


辛い評価を下すことの多い友人がいたく気に入ったらしく、終演後、今まで観てきたライブの中でベスト3に入るかもしれないとはしゃいでいました。なお、彼にとってのベストは誰が何と言おうともマリリン・マンソンのライブであるらしく、人の好みは千差万別なれど、どこに基準を置いているのかが皆目わからず、はたしてその言葉を真に受けていいのかどうか判断に困るところです。それはいいとして、その友人が、徹底して彼らを追いかけようではないかと持ちかけてきたのです。メンバーを個別に追いかければ無間地獄に陥ることになりかねぬと説いて断念させるも、ならば次のDCPRGのライブは絶対行くと今度こそは引くことを知らず。それは自分も望むところであり、ゆえに決定。
いまだ熱気冷めやらず。陳腐な表現にしかなりませんけれど、要はすばらしいライブだったということです。次も行く。


余談。
てっきり一般発売に先行して新作アルバムを購入できるものと思っていたのですが、許されたるは無情にも予約のみ。今さら予約って。なので仕方なくグッズ売り場を物色。会場で販売されるTシャツはボッタクリの権化と信じて疑わぬので元より自分の眼中にはないのですが、そのかわりに見慣れぬアナログ盤を発見。ウダウダと決めかねている姿に業を煮やしてか、早く買えと言わんばかりに「もう2枚しか残っていませんよ」と販売員に説明されるも、冷静に考えればそんなはずはない。いかにも尋常な手口であり方便に違いないと確信しつつも、哀しいかな慌てて購入してしまった次第。レコードプレイヤーが自宅にないわけではないけれど、半ば以上はオブジェであります。


ついでに、少し毛色は違うけれどヴィンセント・アトミクスも観に行くことと相成りました。友人はともかく自分は観に行けるかどうか、また定刻に間に合うかどうかは微妙なところ。その場の勢いに乗じてチケットを取ってしまったので、全てはあとの祭りですが。さらについでながら、スリップノットのライブに連れて行かれることにもなりました。同友人に。わけがわからん。