Soil & “Pimp” Sessions@渋谷タワーレコード (インストアライブ)

「ライヴ活動と口コミだけで音源も発表することなくフジロック・フェスティバルの舞台に立った史上初のバンド」であるらしい。
Vo・Sax・Tp・Key・B・Dr編成。ちなみに、Voといっても歌うわけではない。さりとてポエトリーリーディングでもなく、どう呼べばいいのかわからない。ともかく、大別すればジャズバンドになるだろうか。


『J・D・F』で静かに怪しく幕を開ける。一瞬オヤッと思わせるが、その後は予期したとおり怒涛の演奏が続くことになる。
小太りを超えて明らかに肥え太った見るからに怪しい社長と名乗る男が、満を持して2曲目で登場する。基本的には観客を煽ったり何事か叫んでいたりしている。それ以外は何をするでもなくステージ中央をウロウロしているだけなのだが、存在感抜群の風貌と、場慣れした軽妙な語り口がおもしろく、彼の世界観に否応なく惹きこまれてしまう。大きな図体をして時折小さなシェイカーを振る姿が妙にかわいく映り、遂には「かわいいー」と黄色い声援まで飛ぶ始末。言うまでもなく全て確信犯である。


元晴氏の火の噴くようなアルトサックスの咆哮は一聴の価値あり。吹かれる楽器の方が心配になるほど力まかせにブヒブヒとブローする。とりわけ、『Harbor』のトランペットとの掛け合いが印象的に残る。2小節のユニゾン後、6小節ごとにアドリブを繰り広げるのだが、見せ場と心得ていたのか、CDに収録されているよりも尺が長い。お互いにあらん限りの音を叩き込む様は圧巻だった。呆れるほどにテンションが高く、しまいには客席に飛び込む場面もあった。
その背後では、みどりんのドラミングが蠢く。スタンダードなドラムセットだったからか、ライトシンバルの大きさが目についた。重厚さを求めるためと思われるが、おそらくは大きめのサイズのものが使用されていた。もはやニュアンスもへったくれもなく、荒々しく豪快にバンドを推進させていく。
どの楽器もめっぽう音量が大きく、やたらに手数が多い。誰も退かない、どこまでも前進あるのみ。


中盤にさしかかった頃、社長が、右手を突き上げて「Soil!」と叫ぶよう観客に強要。傍から見ればさぞ異様に映る行為であったろうが、皆おかしくなっているので疑うことなく叫ぶ。
そして、意味深長な詩を読み上げる『殺戮のテーマ』で一旦は終了する。アンコール後、社長が独りでステージ上に現れる。そして、今度は全員で声を合わせ、ひとりずつメンバーの名を呼ぶよう観客に強要。傍から見ればさぞ異様に映る行為であったろうが、やはり皆おかしくなっているので疑うことなく叫ぶ。全員が出揃ったところで、現在収録中らしいアルバムから新曲を披露し、1時間足らずの狂乱のライブはこれにて終了。


噂には聞いていたけれど、なるほどハイテンションでやかましいステージであった。もちろん、茶目っ気も忘れてはいない。一癖も二癖もありそうなメンバーの中でも、社長の存在感は頭ひとつ抜けており、こればかりはライブに足を運ばないと味わえない。悪ノリなので嫌う人もいるだろうが、少なくとも一緒に観に行った友人には喜んでもらえた。何よりである。実際おもしろかったので満足。