PIMPIN’

PIMPIN’

四方の壁に乱反射した熱情が次第に行き場を失い、やがて降り積もって沈殿する。拾い上げてはまた散らす。荒ぶる魂は冷めやらず、今宵も続く不穏な密室劇。


遠慮仮借なくドカドカと鳴り響くバスドラが辺りの大気を圧する。神田周辺に出没する右翼の演説よろしく、したり顔の共感をはじめから放棄し、意味不明な言辞で辺りを煙に巻く社長のヴォーカルがときおり鼻にもつくけれど、無ければ無いでそぞろ虚しくその奇妙な調和は在るべくしてそこにある。そして、競馬で一山当てた資金を元手に、譜面すらロクに読めぬままバークリー音大に留学したというサックス奏者の豪快な人生を体現する雄弁なフレーズがとぐろを巻く。どいつもテンションが異常に高い。
およそジャンル分別など不毛だとは思うが、初期衝動に身を委ねたかのような実にやかましい演奏が、時にパンク・ジャズとも称されることには素直にうなずける。だが、一時の熱情に浮かされはすれど、底部では緻密な計算が絶えず働いているがゆえに着地点を見誤ることはない。敢えて設けた縛りの中で歪に跳躍する様は、まぎれもなくエンターテイメントであり、うさん臭い演出もまた然り。


「ライヴ活動と口コミだけで音源も発表することなくフジロック・フェスティバルの舞台に立った史上初のバンド」であるらしく、何よりライブパフォーマンスが素晴らしいと聞く。明日は彼らのインストアライブへ。